業務用の携帯通信環境において、いま注目されているのが「eSIM」です。物理的なSIMカードを使わず、端末に内蔵されたチップに通信情報をダウンロードして使えるこの仕組みは、カードの差し替えが不要で、導入や運用の柔軟性が格段に向上します。
これまでの法人携帯では、SIMカードの管理や入れ替えに手間がかかり、端末の追加や入れ替え時に時間がかかるという課題がありました。eSIMを導入することで、回線の即時開通・端末管理の効率化・通信コストの見直しなど、さまざまな改善が期待できます。
この記事では、eSIMの仕組みや従来のSIMとの違い、法人利用におけるメリット・注意点、導入時の比較ポイントなどをわかりやすく解説します。さらに、eSIMとモバイルWi-Fiの併用戦略など、今後の通信環境整備に役立つ実践的なヒントもご紹介します。
通信環境のアップデートを検討中の方は、ぜひ最後までご覧ください。
eSIMとは?|物理SIM不要の次世代通信技術
eSIM(embedded SIM)とは、端末内部にあらかじめ組み込まれたSIMのことを指し、従来のように物理カードを差し替える必要がありません。オンライン上で通信プロファイルをダウンロードすれば、即座に回線を利用できる点が大きな特長です。
これにより、回線の開通・切替が物理作業なしで完結するため、設定の柔軟性や運用効率の高さから、法人利用においても注目が高まっています。
eSIMの特長
・物理カードの差し替えが不要
・オンラインでの即時開通・切替に対応
・1台の端末に複数回線の登録が可能(一部機種)
・端末管理の省力化・遠隔制御(MDM連携)も可能
個人利用でも普及が進むeSIMですが、管理性や柔軟性を重視する法人ユースこそ、大きなメリットを享受できる通信手段と言えるでしょう。
SIMカードの役割や機能についてより詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にして下さい。▽
「SIM」ってそもそも何?基礎知識や使い方、選び方について解説!
法人がeSIMを導入するメリットとは?
法人モバイルを導入・運用する上で、課題になりやすいのが「SIM管理」「回線契約の手間」「コストの最適化」「セキュリティ対策」などです。従来の物理SIMでは、端末への差し替え作業や郵送対応が必要で、複数拠点への一括導入や変更が煩雑でした。
eSIMを活用すれば、こうした課題を根本から見直すことが可能です。以下のような点で、多くの法人にとって導入メリットがあります。
①SIMカードの配送・差し替えが不要
オンラインでのプロファイル配布により、物理SIMの配送や差し替えが不要になります。複数台のスマホやIoT端末に対して、QRコードや遠隔操作で迅速に開通でき、拠点間でのやり取りや人的コストが大幅に削減されます。
②契約・回線の柔軟性が向上
業務内容や拠点ごとのニーズに合わせて、短期回線や複数回線を柔軟に切り替えることが可能です。例えば、出張用・検証用の回線など、一時的な用途でも簡単に追加・解約ができ、運用コストの最適化につながります。
③MDM・セキュリティ連携に強い
eSIMは物理的な取り外しができないため、不正利用や情報漏洩リスクの抑制に役立ちます。MDM(モバイルデバイス管理)ツールとの連携により、企業のセキュリティポリシーに沿った端末管理もスムーズに実現できます。
④多拠点・在宅ワークへの対応力
本社・支店・リモートワーカーなど、多様な勤務形態に対して、個別発送やサポートの手間なく通信環境を整えられます。業務用スマホの一元管理にも最適です。
このように、eSIMは「業務の即応性」「セキュリティ」「コスト最適化」の観点からも、現代の法人利用にマッチした通信手段です。とくに管理業務が属人化しやすい中小企業においては、導入によって日々の業務負担を大幅に軽減できます。
eSIMと物理SIMの違い|比較で分かる導入ポイント
「eSIM」は、端末にあらかじめ内蔵されたSIM情報をソフトウェア的に書き換えることで通信を可能にする、新しいSIMの形です。一方で、従来の「物理SIM」は小さなカード型チップを端末に挿して使用するタイプで、現在も多くの法人が利用しています。
業務用のスマートフォンやIoT機器に導入する際、「eSIMと物理SIM、どちらがより適しているのか」は、コスト・導入のしやすさ・セキュリティ・業務効率などさまざまな面から判断する必要があります。
以下の表では、それぞれの特徴を比較して整理しています。
項目 | eSIM | 物理SIM |
---|---|---|
SIM形状 | 端末に内蔵(書き換え可能) | カード型チップを挿入 |
開通方法 | QRコードやプロファイルDL | SIMを挿して設定 |
差し替えの手間 | 不要(オンライン切替) | 都度手動で差し替え |
紛失・盗難時 | 遠隔で即時停止・切替可 | SIMを抜き取られるリスクあり |
導入スピード | 即日・郵送不要 | 配送・物理作業が必要 |
対応端末 | 一部対応機種のみ(増加中) | ほとんどの端末で対応可 |
eSIMは特に「短納期で多数の回線を導入したい」「現場での差し替え作業をなくしたい」「セキュリティを強化したい」といったニーズに非常に相性が良い技術です。
しかし、端末の対応状況や業務要件によっては物理SIMのほうが適しているケースもあります。導入にあたっては、自社の管理体制や利用シーンに応じた適切な選択が重要です。
あわせてこちらの記事もどうぞ:
→クラウドSIMって何?eSIMとの違いは?メリットやデメリットを徹底解説!
法人でのeSIMの活用方法
前章で紹介したように、eSIMにはコストや業務効率、安全性の面で多くのメリットがあります。
しかし、eSIMの本当の価値は、その「柔軟な活用方法」にあります。
従来の物理SIMでは難しかった運用が、eSIMを導入することで一気にスマート化され、業務のスピードと柔軟性が大きく向上します。
この章では、法人におけるeSIMの代表的な活用シーンを取り上げて一つ一つ紹介していきます。
リモートワーク・出張時の通信最適化
テレワークや出張先でも業務用の安定した通信を確保するには、エリアや状況に応じた通信回線の柔軟な切替が重要です。eSIMなら1台の端末でキャリアの変更ができ、通信トラブルのリスクを低減できます。
- 地方・山間部ではエリアに強いキャリアへ即時切替
- 海外出張では現地キャリアのeSIMを利用し通信コスト削減
- 出張用端末に一時的に業務回線を追加可能
拠点・部署ごとの端末管理を効率化
支店や営業所、現場ごとに通信キャリアやSIMカードを個別管理していると、契約管理や変更作業の手間がかかります。eSIMであれば、Web上の管理ツールを使って遠隔でプロファイルの発行・切替ができるため、導入や更新の手間を削減できます。
- SIMカードの郵送・差し替え作業が不要
- 部署異動や機種変更時も遠隔でプロファイル再発行
- 複数台を一括で制御でき、運用負荷が大幅軽減
BYOD(私用端末の業務利用)への対応
従業員の私物端末を業務に活用する「BYOD」は、コスト削減や柔軟な働き方の推進に寄与します。ただし、個人用と業務用の通信を分けて運用できないと、セキュリティや課金の管理が課題になります。eSIMなら1台の端末に2回線を使い分けることができ、こうした問題を解決できます。
- 業務用通信はeSIMに限定することでセキュリティ確保
- 個人通話・通信とは明確に分離した回線管理が可能
- 退職時には業務用プロファイルをリモート削除
このように、eSIMは業務端末の効率的な運用やコスト最適化、セキュリティ強化など、さまざまな観点から法人利用に適した仕組みです。業種や企業規模を問わず、通信環境の柔軟性を高めたいと考える企業にとって、導入するメリットは十分にあります。
eSIM導入時の注意点とよくある課題
eSIMは法人モバイル通信をスマートに進化させる手段として注目されていますが、導入前に把握しておくべき制限や落とし穴も存在します。特に物理SIMと運用スタイルが異なるため、企業の通信管理体制やデバイス選定に影響を及ぼす場面も少なくありません。以下に、実際の法人導入でよく挙げられる課題を整理します。
対応端末が限られている
eSIMはすべてのスマートフォンやタブレットで利用できるわけではありません。
たとえば、一部のAndroid端末や格安スマホにはeSIM非対応のモデルがあり、iPhoneでも古い世代は物理SIM専用となっています。また、IoT機器でeSIMを活用したい場合は、内蔵されている通信モジュールがeSIM対応かどうかも確認が必要です。
あわせて、社内の端末更新サイクルやIT資産管理とも照らし合わせながら、導入のタイミングを見極めるとよいでしょう。
通信事業者・MVNOごとに管理方式が異なる
eSIMの発行・再発行や管理ツールの仕様は、通信事業者によって大きく異なります。
具体的には、eSIMプロファイルの発行や再発行の手順が事業者によってバラバラであったり、法人専用ポータルの有無や操作性に違いがあったりします。中には、法人契約であっても個人契約と変わらないサポート体制しか提供していない事業者も存在します。
複数回線を一元管理したい場合や、多拠点での通信管理を想定している企業では、eSIM対応の管理ツールや導入後のサポート体制までしっかり確認しておく必要があります。
社内でのIT管理体制が求められる
eSIMは物理的に取り外すことができないため、「誰が・どの端末で・どの回線を利用しているか」が見えづらくなりやすいという特徴があります。
そのため、eSIMを導入する企業では、MDM(モバイルデバイス管理)との併用による回線・端末の可視化が推奨されます。また、回線の利用状況や端末の紛失リスクへの備え、部署間での回線共有や切り替えフローの整備など、社内のITガバナンスを見直すことも求められます。
こうした課題は、eSIM自体の欠点というよりも「従来の物理SIMと異なる運用前提」によるものです。導入前に各種リスクを洗い出し、明確な運用ルールを策定しておくことで、eSIMの利便性を最大限に活かすことができるでしょう。
eSIMの設定方法|iPhone・Androidでの基本手順
eSIMは、物理的なSIMカードを差し込まず、端末内蔵のチップにプロファイルをダウンロードして通信を行う仕組みです。導入には各端末での設定作業が必要ですが、数分で完了し、法人用のスマートな回線管理にも適しています。ここではiPhoneとAndroid、それぞれの代表的な設定方法をご紹介します。
iPhoneでのeSIM設定手順(iOS 17対応)
引用:apple.com
Apple公式サポートに基づいた最新の設定方法は以下の通りです。
①「設定」アプリを開き、「モバイル通信」をタップ
②「eSIMを設定」または「モバイル通信プランを追加」を選択
③ 表示される選択肢の中から、いずれかを選ぶ
└ QRコードを使用: 通信会社から提供されたQRコードをカメラでスキャン
└ 通信事業者のアプリを使用: 指定されたアプリを通じてeSIMをダウンロード
└ eSIMを転送: 近くにある別のiPhoneからeSIMを転送(対応機種のみ)
④ 表示される案内に従ってeSIMをアクティベート
⑤ モバイル通信プランに任意の名称を設定し、主回線か副回線かを選択
⑥ iMessageやFaceTime、モバイルデータ通信の利用回線を設定
※eSIMの転送は、eSIMクイック転送に対応した通信事業者間でのみ利用可能です。また、法人契約ではQRコードでの設定が一般的です。
※設定に不安がある方は、Apple公式サポートページもあわせて確認すると、わかりやすく解説されています。
AndroidでのeSIM設定手順(Pixel・Galaxyなど)
引用:docomo.ne.jp
Android端末のeSIM設定方法はメーカーにより多少異なりますが、基本的な手順は以下の通りです。
①「設定」アプリを開き、「ネットワークとインターネット」または「接続」メニューへ
②「SIM」または「モバイルネットワーク」→「eSIMを追加」をタップ
③ QRコード読み取り画面が表示されたら、通信事業者から提供されたQRコードをスキャン
④ 表示された内容を確認して「有効化」または「アクティベート」を選択
⑤ eSIMの名称設定や、主回線/副回線の役割を設定
※一部端末では、QRコードの代わりにSM-DP+アドレスやアクティベーションコードを手動で入力する場合もあります。
どちらのOSも、eSIMの導入には通信事業者側でのプロファイル発行が必要です。法人導入の場合は、一括設定に対応した管理ポータルの活用により、現場での作業負担を大幅に軽減できます。
※設定に不安のある方は、契約しているキャリアの利用ガイド等(docomo等)を確認しながら、設定を行ってください。
eSIM対応法人向けサービスを選ぶ際のポイント
eSIM導入の実効性を高めるためには、通信事業者やプランの選定が非常に重要です。特に法人利用では、「コスト」や「回線品質」だけでなく、管理機能の充実度やサポート体制も導入後の業務効率に大きく影響します。
以下は、eSIMを法人で導入する際に確認しておきたい主要な選定ポイントです。
・eSIM対応端末の互換性
・発行・再発行の手続き
・法人用管理ツール
・セキュリティ機能
・通信キャリアとの回線品質
・サポート体制
また、料金体系も各社異なるため、初期費用・月額費用・プロファイル発行料なども合わせて比較検討するのが理想的です。
項目 | 確認すべきポイント |
---|---|
eSIM端末の互換性 | スマートフォン・タブレット・IoT機器での動作実績 |
発行・再発行手続き | QRコード対応/即日発行の可否 |
法人用管理ツール | 複数回線の一元管理や利用状況の可視化が可能か |
セキュリティ機能 | VPN/MDM対応状況・SIMロック機能 |
通信品質 | 利用エリアでの電波状況・混雑時の速度制御 |
法人向けサポート | 法人向け専用窓口の有無、問い合わせ対応等 |
上記ポイントをもとに、「費用対効果」と「運用のしやすさ」を天秤にかけながら自社に最適なeSIMサービスを選定することが、導入成功のカギとなります。
法人携帯にeSIMを導入するならロケットモバイル
ロケットモバイルでは、法人向けにeSIMやモバイルWi-Fiなど、幅広い通信環境を整えるサービスを展開しています。
≪ロケットモバイル法人eSIMの特徴≫
☑ eSIM対応の楽天回線プラン(Rプラン)を提供
☑ オンラインでプロファイル発行・再発行が可能
☑ 法人向けの一括管理ポータルあり
☑ 月額コストを抑えつつ、即日開通も対応可能
☑ 端末変更・社用携帯の入替にも柔軟対応
〇端末の発送を待たずに即日開通が可能
物理SIMと異なり、eSIMなら申し込み後にプロファイルをダウンロードするだけですぐに使い始められます。急な人員追加や端末入れ替え時でも、対応がスピーディです。
〇管理ポータルで複数回線を一元管理
法人向けの専用ポータルにより、回線の状況確認やeSIMの切り替え、アカウント管理までを一括で行えます。IT部門の負担を最小限に抑えた運用が可能です。
〇通信コストも抑えられる低価格プラン
ロケットモバイルのeSIMプランは、楽天回線を活用することで月額料金を大幅に削減可能です。小規模拠点やBYOD用途にも適した柔軟なプラン設計が魅力です。
〇IoT・リモートワーク用途にも展開可能
データ通信専用プランや固定IP対応オプションを組み合わせることで、監視カメラ・センサー類・リモート接続業務など、幅広い業務に対応可能です。
eSIMで法人携帯の運用をスマートに変革したいと考えている企業は、まずはロケットモバイルのプランをチェックしてみてください。
詳細は以下のボタンから確認できます▽
まとめ
eSIMは、法人における通信インフラの柔軟性と効率性を高める新しい選択肢として注目を集めています。物理SIMの差し替えが不要になることで、端末管理の手間を削減できるほか、リモートワークや短期プロジェクトといった多様な業務スタイルにも対応しやすくなります。
一方で、端末や通信事業者による対応状況の差や、社内のIT体制の見直しといった課題もあるため、導入前の検討は慎重に行う必要があります。特に複数回線を管理する法人では、MDMの導入や管理ポータルの使いやすさなどにも注目すべきです。
ロケットモバイルでは、eSIMやモバイルWi-Fiといった法人向けの柔軟な通信サービスを提供しています。導入に迷っている場合は、自社の利用シーンに合ったプランの比較や専門サポートの活用を通じて、最適な通信環境を整えていきましょう。