VPNとは?基本の仕組みから企業導入のメリット・選び方まで初心者向けに解説

近年、リモートワークの普及やセキュリティ意識の高まりにより、「VPN」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、「具体的に何ができる技術なのか」「導入すべきなのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

VPNは、インターネット上で安全な通信を実現する技術として、多くの企業で活用されています。適切に導入すれば、セキュリティの向上はもちろん、働き方の柔軟性やコスト削減など、様々なメリットを得ることができます。

本記事では、VPNに関する基礎知識や仕組みから、導入のメリット・デメリットまで、初心者の方にも分かりやすく解説します。VPNについて正しく理解し、自社にとって最適な選択ができるよう、ぜひ参考にしてください。

VPNについてもっとよく知りたい方は以下の記事もどうぞ▽

参考記事:【法人VPN】導入の判断基準・コスト・おすすめサービスを徹底解説

目次

VPNとは何か?|インターネットに”専用道路”を作る技術

VPNとは、Virtual Private Networkの略語で、インターネット上に”仮想的な専用回線”を構築し、安全にデータをやり取りできる技術のことです。

身近な例で理解するVPN

VPNを理解するために、道路に例えてみましょう。

通常のインターネット通信の場合、一般道路を走る車のように、誰でも通れる公共のルートでデータが移動します。しかし、この道路では他の車(悪意のある第三者)に荷物(データ)の中身を見られたり、盗まれたりするリスクがあります。

それに対して、VPNを使った通信の場合は、高速道路の専用レーンのように、暗号化された専用のトンネル内でデータが移動します。このトンネルは特別な鍵(暗号化技術)で守られており、正当な利用者以外は中身を見ることができません。

VPNが解決する3つの課題

VPNは、現代のビジネスシーンで多くの企業が直面している通信に関する課題を解決します。

≪VPNがあればできること≫
✅プライバシーの保護
✅離れた拠点から社内システムにアクセス
✅セキュリティの確保

〇プライバシーの保護
データの中身を第三者に見られることなく、安全に通信できます。
例えば、カフェの公共Wi-Fiを使って顧客情報にアクセスする際、VPNを使用することで通信内容が暗号化され、同じWi-Fiを利用している他の人や悪意のある第三者に情報を盗み見られる心配がありません。

離れた拠点から社内システムにアクセス

離れた拠点同士を、まるで同じオフィス内にいるかのように接続できます。

例えば、東京の本社と大阪の支店をVPNで接続すれば、支店のスタッフも本社のサーバーにある販売管理システムや顧客データベースに、物理的に同じオフィスにいるときと同じようにアクセスできます。これにより、拠点間でのリアルタイムな情報共有が可能になります。

〇セキュリティの確保

加えて、社外から社内ネットワークにアクセスする際、VPNを使用することで、まるで会社のオフィスから接続しているのと同じレベルのセキュリティを保ちながら業務を継続できます。
例えば、営業担当が顧客先や外出先から会社のメールサーバーや基幹システムにアクセスする場合などに活用することができます。

VPNが生まれた背景|そもそもなぜこの技術が必要になったのか

では、そもそもなぜVPNという技術が生まれたのでしょうか?この背景を知ることで、現在のビジネスにおけるVPNの重要性がより理解できるようになります。

実は、VPNの誕生には企業のIT環境における大きな課題がありました。順を追って解説していきます。

1990年代:専用線の時代とその課題

専用線全盛期の企業ネットワーク 1990年代までの企業は、本社と支店を結ぶために「専用線」を使用していました。専用線とは、通信キャリアが企業専用に引く物理的な通信回線のことです。

一見すると理想的に思える専用線ですが、実際には多くの企業を悩ませる欠点もありました。

以下は、専用線のメリットとデメリットです。

≪専用線のメリットとデメリット≫
✅ 高いセキュリティと安定した通信品質
❌ 非常に高額な利用料金(月額数十万円〜)
❌ 拠点が増えるたびにコストが幾何級数的に増加
❌ 海外拠点との接続は特に高額

専用線は高いセキュリティと安定した通信品質を備えている一方で、導入・運用コストが非常に高額で、拠点数の増加に伴って費用負担が急激に膨らむという課題がありました。

具体的なコスト例を見てみると、以下のようになります。

東京〜大阪間の専用線:月額30〜50万円
東京〜海外支店:月額100万円以上
5拠点を接続する場合:年間数千万円のコスト

こうして見ると、そのコストがいかに莫大であるかがよく分かります。

インターネットの普及がもたらした転機

1990年代後半、インターネットの商用利用拡大に伴い、企業にも普及し始めると、「安価で世界中につながるこのネットワークを企業の専用線代わりに使えないだろうか?」という発想が生まれました。

しかし、インターネットは「パブリックネットワーク」、つまり誰でも使える公共の通信網です。企業の機密データをそのまま流すには、以下のような致命的な問題があります。

≪専用線のメリットとデメリット≫
盗聴リスク:データの中身が第三者に見える
改ざんリスク:通信途中でデータを書き換えられる可能性
なりすましリスク:正当な相手かどうか確認できない

この3つのリスクを放置すれば、企業の信頼や事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

VPN技術の誕生|「仮想的な専用線」という画期的な発想

1990年代後半〜2000年代初頭、この課題を解決する策としてVPN(Virtual Private Network)技術が開発されました。

VPNは、既存のインターネット回線を安全な専用通信路に変えられるという点において革新的で、暗号化技術を活用することによって、専用線と同等の高いセキュリティと信頼性を実現しました。

VPNがもたらした企業ネットワークの革命

VPNの登場は、企業におけるネットワーク戦略を根本から変える大きな転換点となりました。

それは単なる通信技術の置き換えではなく、コスト・働き方・セキュリティの3つの側面で、企業の競争力や業務の在り方を大きく変えることになりました。

コスト革命

従来の専用線では、年間数千万円規模の費用がかかることも珍しくありませんでした。
しかし、VPNの導入によって、このコストは年間数百万円程度まで削減可能になりました。

拠点数が増えても、費用が比例して増加しにくい仕組みになっているため、全国や海外に拠点を持つ企業にとって大きなメリットです。

これにより、海外展開や新規拠点の立ち上げといった戦略的な意思決定のハードルも大幅に下がりました。

働き方革命

VPNの普及は、企業の働き方にも大きな変化をもたらしました。

オフィスに出社しなくても、社内システムやデータに安全にアクセスできる環境が整い、在宅勤務やモバイルワークといった柔軟な働き方が現実的な選択肢となったのです。

こうした変化は、業務効率の向上だけでなく、社員のワークライフバランス改善にもつながっています。

セキュリティ革命

VPNはコスト削減や柔軟な働き方を支えるだけでなく、セキュリティ面でも企業に革命をもたらしました。専用線と同等レベル、あるいはそれ以上の安全性を、より安価に実現できるようになったのです。

暗号化技術の進歩により、通信内容の盗聴や改ざんといったリスクが大幅に低減され、業種や規模を問わず多くの企業が安心してリモート接続を活用できるようになりました。

なぜ今、企業にVPNが必要なのか?

近年、多くの企業でVPNの必要性が高まっている背景には、働き方の変化とサイバー攻撃の増加があります。

働き方の変化がもたらした新たな課題

テレワークの普及

コロナ禍をきっかけに在宅勤務が一般化し、今では恒常的にテレワーク制度を取り入れる企業も増えています。これにより、従業員が自宅や外出先から社内システムにアクセスする機会は急増しました。

しかし、自宅のインターネット環境やカフェ・ホテルの公共Wi-Fiは、企業オフィスのネットワークのように強固なセキュリティ対策が施されているわけではありません。その結果、情報漏洩や不正アクセスのリスクが格段に高まっています。

クラウドサービスの利用拡大

SaaSやクラウドストレージなど、業務データをクラウド上で管理するケースが当たり前になりました。利便性が高まる一方で、アクセス制御が甘いと「誰が、いつ、どこから」利用しているのかを正確に把握できず、社外からの不正利用を招く可能性があります。

モバイル端末の業務利用

営業担当がスマートフォンやタブレットから顧客情報にアクセスしたり、出張先で資料をダウンロードしたりするのは日常的な光景になっています。しかし、モバイル端末は盗難・紛失リスクも高く、不正アクセスの標的になりやすいのが実情です。

サイバー攻撃のリスク増大

最新の統計によれば、中小企業を狙ったサイバー攻撃は年々増加傾向にあります。特に以下のような攻撃が深刻化しています。

データ盗聴:暗号化されていない通信を傍受し、顧客情報や社内データを盗み取る
なりすまし攻撃:正規のユーザーに偽装して社内システムに不正侵入する
ランサムウェア:データを暗号化して業務を停止させ、身代金を要求する

こうした攻撃は一度被害に遭えば甚大な損害を招き、業務停止や顧客からの信頼失墜、法的責任追及といったリスクにつながります。VPNは「通信の暗号化」と「正規ユーザーの認証」を通じて、こうした攻撃の多くを未然に防ぐ手段となります。

法的要請の高まり

近年、個人情報保護法をはじめとする法規制は年々強化されており、企業には顧客データや社員データの適切な管理が求められています。もし情報漏洩が起これば、社会的信用の失墜だけでなく、多額の罰金や損害賠償に発展する可能性もあります。

VPNを導入することは、法的義務を果たす上で有効な技術的手段のひとつです。特に通信の暗号化は、個人情報や機密情報を扱うすべての企業にとって、今や“必須条件”といえるでしょう。

VPNの仕組み|暗号化でデータを守る

VPNがどのようにデータを守っているのか、技術的な仕組みを分かりやすく説明します。

暗号化技術の基本

VPNでは「暗号化」という技術を使って、データを第三者に読めない形に変換します。暗号化によって、外部からの盗聴や改ざんを防ぎ、正しい鍵を持つ相手だけがデータを元に戻せるようになります。

暗号化のイメージ

VPNで使われる主な暗号方式

VPNの仕組みを支えているのは複数の暗号技術です。それぞれが異なる役割を担い、組み合わせることで安全性と処理速度を両立しています。主な暗号方式は以下の4つです。

・共通鍵暗号(対称鍵)
・公開鍵暗号(非対称鍵)
・ハイブリッド暗号
・ハッシュ化

順番に説明していきます。

共通鍵暗号(対称鍵)

共通鍵暗号は、送信者と受信者が同じ鍵を使って暗号化・復号を行う方式です。
仕組みはシンプルですが処理が高速なため、大量のデータをリアルタイムに扱うVPN通信の“本体部分”に使われます。

簡単に言えば、「同じ鍵を持つ者同士だけが中身を読める仕組み」であり、VPNで大量の業務データをやり取りできるのは、この方式があるからです。代表的な例としてAES(Advanced Encryption Standard)が使われています。

公開鍵暗号(非対称鍵)

公開鍵暗号は、暗号化と復号に異なる鍵(公開鍵と秘密鍵)を使う技術です。VPNでは、接続開始時の「安全な鍵交換」や「サーバー・端末の正当性確認」に活用されます。

簡単に言えば、「初めて会う相手と安全に“合言葉(共通鍵)”を共有するための仕組み」です。RSAやECCといった方式があり、セキュリティの強度と処理速度のバランスをとるために使われています。

ハイブリッド暗号

ハイブリッド暗号は、共通鍵暗号と公開鍵暗号の“いいとこ取り”をした仕組みです。まず公開鍵暗号を使って共通鍵を安全にやり取りし、その後の通信は高速な共通鍵暗号で処理します。

簡単に言えば、「まず安全にカギを渡し合い、そのカギを使って本格的な通信を暗号化する」方式です。SSL/TLS-VPNやIPsecといった現代のVPNで主流になっているのはこの仕組みです。

ハッシュ化

ハッシュ化は、データを一方向の関数で固定長の“ハッシュ値”に変換する技術です。VPNでは「通信が途中で改ざんされていないか」を検証するために利用されます。

簡単に言えば、「送ったデータと届いたデータが本当に同じかを確認する仕組み」です。具体的にはHMAC(Keyed-Hash Message Authentication Code)やSHA-256が用いられ、送信時と受信時に同じハッシュ値が得られることで完全性が保証されます。

VPN通信の流れ

VPN通信は、いくつかのステップを順に実行することで安全性を確保します。主なステップは以下の5つです。

・接続開始
・認証
・暗号化開始
・データ送信
・復号化

順番に説明していきます。

接続開始

まず、ユーザー端末(クライアント)がVPNサーバーに接続要求を送ります。
これにより「VPNを通じた安全な通信を開始する準備」を整えます。利用するプロトコルによって接続方式は異なり、SSL-VPNでは443/TCP、IPsec/IKEv2ではUDP 500/4500などが一般的です。

認証

次に、ユーザーが正規の利用者かを確認します。一般的にはIDとパスワードに加え、証明書やワンタイムパスワード、多要素認証(MFA)などを組み合わせます。場合によっては端末のセキュリティ状態も確認し、不正アクセスやなりすましを防ぎます。

暗号化開始

認証に成功すると、暗号スイートの合意と鍵交換が行われ、安全な「VPNトンネル」が確立されます。通常は公開鍵暗号方式でセッション用の共通鍵を安全に交換し、その後は高速な共通鍵暗号(AESなど)で通信を保護します。
さらにHMACなどのハッシュを利用して、データ改ざんが行われていないかも確認します。

データ送信

暗号化されたデータはVPNトンネル内を通過し、第三者からは暗号文としてしか見えません。
そのため、盗聴されても内容を解読される心配がありません。ただし通信速度は回線の品質やVPN機器の性能、暗号化処理の負荷に影響を受けます。

復号化

受信側ではまずHMACなどで改ざんの有無を確認し、問題がなければデータを復号して元の内容に戻します。その後、社内ネットワークへの振り分けやアクセス制御が適用され、安全な形で業務システムに利用されます。

このように、VPNは「接続開始 → 認証 → 暗号化開始 → データ送信 → 復号化」という5つのステップを順に実行することで、通信の安全性と信頼性を確保しています。

VPNが提供する3つの保護機能

VPNは通信を安全にするために、次の3つの保護機能を備えています。

機密性:データの中身を第三者に見られないよう暗号化で保護
完全性:通信途中でデータが改ざんされていないかをチェック
認証:正当なユーザー以外のアクセスを防止

これら3つの機能が組み合わさることで、VPNは単なる通信手段ではなく、企業活動を支える強固なセキュリティ基盤として機能します。

企業がVPNを導入する5つのメリット

VPNを導入することで得られる効果は、単なる「通信の安全性向上」にとどまりません。セキュリティ強化からコスト削減、働き方改革、そして将来の事業継続性まで、企業の経営全体に直結する大きなメリットがあります。ここでは、企業にとって特に重要な5つのメリットを解説します。


セキュリティの大幅向上

近年、情報漏洩や不正アクセスは中小企業にとっても深刻な経営リスクとなっています。
VPNを導入すれば、通信内容がすべて暗号化され、公共Wi-Fiや外出先からのアクセスでも安全にデータを送受信できます。また、ユーザー認証機能によって、なりすまし攻撃を防止することも可能です。

具体的な効果例

・顧客情報の漏洩リスクを90%以上削減(業界統計より)
・サイバー攻撃による被害額の大幅軽減
・個人情報保護法や各種コンプライアンス要件への対応強化


働き方の柔軟性向上

テレワークやハイブリッドワークの普及により、従業員は「どこで働くか」を柔軟に選べる環境が求められています。VPNを使えば、自宅やカフェ、出張先からでも、まるでオフィスにいるかのように社内システムへアクセス可能です。
これにより、営業現場で最新情報をすぐに確認できるほか、災害や緊急時でも業務を途切れさせずに続けられるBCP(事業継続計画)対策にもつながります。

生産性の向上ポイント

・通勤時間削減により労働時間を有効活用
・集中しやすい環境で業務品質が向上
・地方在住の優秀人材も採用可能に


通信コストの削減

従来の専用線と比較すると、VPNは圧倒的にコスト効率に優れています。専用線が月額10〜50万円かかるのに対し、VPNなら月額1〜10万円程度で利用できるケースも少なくありません。拠点数が増えてもコストが急激に膨らむことはなく、長距離通話料や出張費の削減効果も見込めます。

ROI(投資対効果)の一例

・年間通信コストを約300万円削減
・出張費を年間150万円削減
・生産性向上による売上増加:年間500万円規模

単なる「節約」にとどまらず、経営全体の効率化に寄与するのがVPNの強みです。


IT管理の効率化

複数拠点やリモート環境を抱える企業にとって、ネットワークの運用管理は大きな負担です。
VPNを導入すれば、ネットワーク全体を一元的に管理でき、セキュリティポリシーの統一やソフトウェア更新の効率化が可能になります。

また、障害対応も集中管理ができるため、各拠点に専門ITスタッフを置く必要がなくなり、人的コストの削減にもつながります。

メリットまとめ

・全拠点のネットワークを本社から集中管理
・セキュリティルールを一括適用可能
・定期メンテナンスや障害対応の迅速化


事業継続性の確保

自然災害やシステム障害など、予期せぬトラブルが発生した際、VPNは企業の「命綱」となります。本社が被災しても、拠点や自宅から安全に業務を続けられるため、BCP(事業継続計画)を実現する重要なインフラです。

さらに、将来的な拡張性にも優れており、新拠点の追加やM&Aによる企業統合時にも柔軟に対応できます。海外展開の際にも、現地と日本本社を安全かつ低コストでつなぐことができます。

主なメリット

・災害時の迅速な業務継続
・データ分散によるリスク低減
・海外展開や新規拠点立ち上げに柔軟対応


VPNは「セキュリティを高めるツール」としてだけでなく、働き方の多様化や経営効率化、そして将来の事業継続性を支える基盤技術として大きな価値を持っています。導入を検討する際には、これら5つのメリットを総合的に評価することで、自社に最適な運用モデルを選択できるでしょう。

VPN導入前に知っておきたい注意点とデメリット

VPNは多くのメリットを持つ一方で、導入や運用にあたって注意すべき点も存在します。これらを事前に理解し、対策を講じておくことでトラブルや不要なコストを避け、スムーズな導入につなげることができます。


通信速度への影響

VPNではすべての通信データを暗号化・復号化するため、通常の通信に比べて処理に負荷がかかり、10〜30%程度の速度低下が生じることがあります。テレワークやクラウド利用が増える中で、速度低下は業務効率に直結する課題となり得ます。

対策のポイント

・高速な暗号化処理を持つVPN機器の導入
・十分な帯域幅を確保できるインターネット回線の利用
・業務用途に応じた暗号化レベルの最適化


初期設定の複雑さ

VPNは強力なセキュリティ技術である一方、導入時の初期設定は専門知識を必要とします。ネットワーク設計、セキュリティポリシー策定、ユーザー管理・アクセス権限の設定など、構築時に検討すべき項目が多く存在します。

解決策

・信頼できるシステムインテグレーターやベンダーとの連携
・導入サポートが充実したVPNサービスの活用
・小規模から段階的に導入してリスクを軽減


運用・保守コスト

VPNは一度導入して終わりではなく、運用・保守のための継続的な費用が発生します。ライセンスやサポート費用に加え、定期的なセキュリティアップデートへの対応も必要です。

コスト管理のコツ

・本当に必要な機能に絞ったプラン選択
・複数年契約によるコスト削減
・内製と外注のバランスを見極めて最適化


セキュリティ管理の重要性

VPNを導入しても、それ自体が万能のセキュリティ対策になるわけではありません。ユーザー認証情報やアクセスログの管理、セキュリティインシデント対応など、新たな管理業務が発生します。

管理体制の整備ポイント

・セキュリティポリシーを明文化し、全社員に共有
・定期的なセキュリティ教育の実施
・インシデント対応手順をあらかじめ策定


依存リスク

VPNはリモートアクセスや拠点間通信の基盤ですが、もし障害で利用できなくなると、業務が止まってしまうリスクがあります。特に全社的にテレワークを導入している企業にとって、VPN停止は大きな影響を及ぼします。

リスク軽減策

・冗長化構成によってシステムの可用性を確保
・複数のVPN接続経路を用意し、バックアップ回線を準備
・緊急時に利用できる代替手段(クラウド直結型アクセスなど)の検討


VPNの導入・運用には一定のコストや管理負荷が伴います。
通信速度低下、初期設定の複雑さ、セキュリティ管理の追加業務などをあらかじめ理解し、計画的に導入を進めることが重要です。事前の準備と適切な運用体制を整えれば、デメリットを最小限に抑えつつ、メリットを最大限に活かすことができるでしょう。

よくある質問|VPNの疑問を解決

ここでは、VPNに関して多く寄せられる質問を取り上げ、分かりやすく整理しました。

Q. VPNの導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
A. 企業の規模や要件によって大きく異なりますが、目安は以下のとおりです。

小規模企業(従業員10-30名)
 初期費用:10-50万円
 月額費用:3-10万円

中規模企業(従業員50-200名)
 初期費用:50-200万円
 月額費用:10-30万円
※費用の内訳には、VPN機器・ライセンス・設定作業・保守サポートが含まれます。

Q. 既存のインターネット回線でもVPNは使えますか?
A. はい、基本的には既存の回線でご利用いただけます。

ただし、VPN利用時は暗号化処理により通信速度が低下するため、現在の回線速度に余裕がない場合は、回線の増強を検討することをお勧めします。

Q. VPNを導入すれば、100%セキュリティは安全ですか?
A. VPNは非常に強力なセキュリティ技術ですが、「100%安全」ということはありません。

安全性をより確実なものにするためには、以下のような対策を並行して行うことが重要です。

エンドポイントセキュリティの強化(ウイルス対策ソフトやマルウェア対策の導入)
・定期的なセキュリティ教育(社員へのリスク周知やトレーニング)
・アクセス権限の適切な管理(必要な人だけが必要な情報にアクセスできる設定)
・定期的なシステム監査(設定や運用状況が適切かを継続的に確認)

これらを組み合わせることで、VPNの効果を最大限に引き出せます。

Q. 社員のプライベート通信も監視されますか?
A. 適切に設定されたVPNでは、業務通信のみが対象となり、プライベート通信は監視されません。

分割トンネリング(Split Tunneling)という技術を使うと、通信の経路を用途ごとに振り分けることができます。
業務関連の通信のみをVPN経由とし、その他の通信は通常のインターネット経由とすることが可能です。

Q. スマートフォンやタブレットでもVPNは使えますか?
A. はい、多くのVPNサービスがモバイル端末に対応しています。

主な対応OS
 iOS(iPhone・iPad)
 Android
 Windows Mobile

専用アプリをインストールするだけで、簡単にVPN接続が可能です。

Q. VPNの通信速度が遅い場合、どう対処すればよいですか?
A. いくつかの改善方法があります。

すぐにできる対策
 VPNサーバーの変更(最寄りのサーバーを選択)
 暗号化レベルの調整
 不要なアプリケーションの終了

根本的な改善
 VPNサービスの見直し
 インターネット回線の増強
 より高性能なVPN機器への変更

これらの対策を段階的に試すことで、原因を切り分けながら最適な改善策を見つけることができます。特に業務利用の場合は、安定した通信環境を維持することが生産性向上にも直結します。

まとめ|VPNは企業のデジタル基盤を支える重要技術

この記事では、VPNの基本的な仕組みから企業での活用方法まで、幅広く解説してきました。最後に、重要なポイントをまとめます。

≪VPNが必要な企業の特徴≫
テレワークを導入している、または検討中
・ 複数拠点を持っている
・ 営業担当が外出先で社内データにアクセスする
・ 顧客の個人情報を扱っている
・ クラウドサービスを業務で利用している
・ セキュリティ事故による事業停止リスクを回避したい

これらの条件に当てはまる場合、VPNは業務の安全性と効率性を高める有力な手段となります。

VPNは、適切に導入・運用することで、企業のセキュリティ向上や生産性改善、コスト削減など、多くのメリットをもたらします。

重要なのは、「技術ありき」ではなく、「自社の課題解決」を出発点として、VPNを含むIT戦略を検討することです。

自社の課題に合ったVPNを導入・活用することで、安全で効率的な業務環境の構築を目指していきましょう。

参考記事:iPhoneは本当に安全?企業が今すぐ見直すべきセキュリティ対策

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