IoTデバイスの普及に伴い、IoTに対応したSIMの需要が高まっています。本記事では、IoT SIMの基本から選び方、主要サービスの比較、実際の活用事例までを詳しく解説します。2025年の最新情報をもとに、貴社のIoT活用に最適なSIM選びをサポートします。

IoT SIMとは?
IoT SIMは、IoT(Internet of Things)デバイス向けに設計されたSIMカードです。スマートフォン用のSIMとは異なり、少ないデータ容量で長期間の安定した通信を可能にします。
例えば、スマートメーターや監視カメラなど、常時小容量のデータを送信するデバイスに適しています。グローバルな接続性や高いセキュリティも特徴で、農業、医療、物流など様々な分野で活用されています。IoT SIMは、デバイスがクラウドと効率的に通信するための基盤を提供することで、ビジネスを加速させます。
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一般的なSIMとの違い
IoT SIMとスマートフォンなどに利用される一般的なSIMは、用途や機能が大きく異なります。
以下に、通信量、料金体系、契約期間などの観点から比較表をまとめました。
項目 | IoT SIM | スマホSIM |
---|---|---|
通信量 | 少量(MB単位/日) | 大容量(GB単位/月) |
料金体系 | 従量課金or定額(低コスト) | 月額定額(高コスト) |
契約期間 | 長期(数年~10年) | 短期(月単位~1年) |
セキュリティ | 強化(VPN対応など) | 標準 |
ローミング | グローバル対応 | 地域限定 |
このように、IoT SIMは低コストで長期利用に最適化されており、グローバルな接続性が求められるIoTデバイスに適しています。
IoT SIMの主な特徴
IoT SIMの特徴は以下の通りです。
- 少ない通信容量:スマートメーターが1日数MBのデータを送信するなど、少量通信に特化
- 長期利用向け:長期間の運用を前提とした料金体系
- セキュリティ強化:VPNや暗号化で、医療機器のデータ送信を保護
これらの特徴により、IoT SIMは安定性とコスト効率を両立しています。
IoT SIMの仕組み
IoT SIMは、IoTデバイスがクラウドと通信するための専用SIMです。低帯域幅で効率的なデータ送信を実現し、グローバルなローミングやマルチネットワーク対応により、どこでも安定した接続を提供します。MQTTのような専用の通信プロトコルを活用し、デバイスからクラウドへのデータ転送を最適化します。
IoT SIMの通信の流れ
IoT機器からクラウドまでの通信の流れは以下の通りです。
- データがIoTデバイスやセンサーによって収集される。
- 収集されたデータがIoT SIMを経由してネットワークに送信される。
- データがネットワークを通じてサーバー/クラウドに送信される。
- データがサーバー/クラウド上で蓄積・解析される。
- 解析されたデータが、アプリケーションを通じてユーザーにとって便利な形となって表示される。

参考:IoT実現に必要な5つの要素と仕組み(ICT Digital Column powered by NTT PC Communications)
少量データ通信に特化した設計とは?
IoT SIMは少量データ通信に最適化されており、1日数MBのデータを低コストで送信可能です。IoT SIMは用途に応じた様々な仕様や料金体系があるため、最適な運用のためにとれる選択肢は多いと言えます。例えば、スマートメーターなどの定期的なデータ通信が必要な利用用途では定額制のIoT SIMが適しており、物流トラッキングなど通信量が変動しやすい用途においては従量課金制のIoT SIMが適しています。
IoT SIMを選ぶときの6ポイント
IoT SIM選びの鍵となる6つのポイントをまとめました。最適な料金プラン、セキュリティ、契約期間、拡張性、データ容量、通信エリアと品質を具体的に検証し、貴社のニーズに合ったSIMを安全に選びましょう。
1.最適な料金プランを選ぶ
用途に応じて定額制または従量課金制を選択しましょう。併せて、初期費用や解約手数料、データシェアや繰り越しの可否を確認しておくと安心です。
2.セキュリティと管理機能を検証する
暗号化(TLS/SSL)、認証方式(CHAP、証明書)、閉域網対応などを確認しましょう。管理画面で一括監視・更新が可能であれば便利です。HIPAAやGDPRなど業界規制への対応も確認しておくと安心です。
3.契約期間を適切に設定する
利用期間に合わせ、短期(例: 1カ月)または長期(例: 1年以上)の契約期間を設定しましょう。併せて最低契約期間、解約ペナルティ、プラン変更の柔軟性なども確認しておくと安心です。
4.拡張性を確保する
デバイスの増加や新機能の追加に対応できるかを評価しましょう。併せて、オプション機能、SIM追加発行の容易さやクラウド連携の有無(AWS、Azure)、マルチキャリア対応の有無なども確認しておくと安心です。
5.データ容量を適切に選定する
用途ごとのデータ量に合うプランを選びましょう。併せて、データ利用量が超過したときの料金や通信制限の有無も確認しておくと安心です。
6.対応エリアと通信品質を確認する
国内(例: NTTの4G/5G網)またはグローバルローミングのエリア対応を検証しましょう。併せて、僻地や地下での安定性、5G/LTE-Mへの対応の有無、ローミング料金なども確認しておくと安心です。
IoT SIMのおすすめ8サービスを比較
本項では大手キャリア系とMVNOのIoT SIMサービスを比較し、特徴や料金を解説します。各サービスへのスキップリンクで詳細を確認可能です。
MVNO各社のIoT SIM
MVNO各社が提供するIoT SIMは、大手キャリア系と比べてよりきめ細やかなプランを提供しているのが特徴です。以下に、IoTに特化したプランをピックアップしました。以下のリストから項目をクリックすると、サービス概要にジャンプします。
freebit cloud security SIM for IoT
フリービット株式会社が提供するfreebit cloud security SIM for IoTは、多彩なセキュリティ機能と接続性が備わっています。UTMによるセキュリティフィルタリングを標準搭載し、ファイアウォールによるアクセス制御も実装できます。またクラウドゲートウェイを利用したインターネット経由のVPN、お客様がご利用中の閉域網接続、AWSへの閉域接続が可能であるため、セキュリティ面で安心のできるIoTネットワーク環境を構築できます。
SORACOM 日本カバレッジ IoT SIM

株式会社ソラコムが提供する日本カバレッジ IoT SIMはNTTドコモやKDDIなど複数キャリアの回線を提供しており、小容量の従量課金や低コストの定額プランが特徴です。日本国内だけでなく、100を超える国・地域にも対応したグローバルカバレッジ IoT SIMもあるため世界的なIoTプロジェクトに適しています。
mineo M2Mアクセス

株式会社オプテージが提供するmineo M2Mアクセスは3キャリアに対応しており、「アップロード特化」「夜間通信特化」の2つのコースが用意されています。駐車場の自動精算機の遠隔監視やシステム開発におけるクラウドへの通信コストの削減など、様々な場面で活躍しています。
ロケットモバイル 神プラン

株式会社IoTコンサルティングが提供するロケットモバイルの「神プラン」は通信速度が最大200kbpsと低速ではあるものの、「容量無制限」「月額298円(税抜)~」「4キャリア対応」の3拍子が揃ったIoT SIMであることが特徴です。主に太陽光発電所の遠隔制御やスマート農業などの用途で活用されています。
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ロケットモバイルZ

ロケットモバイルZは固定IPアドレスを利用可能なIoT SIMです。セキュリティ性の高い運用が可能なため、監視カメラや社内ネットワークなどの制限されたアクセス環境に適しています。3キャリアに対応しており、10MB~無制限まで選べる幅広いプラン設計が特徴です。
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MVNO各社のIoT SIM比較表
サービス | freebit cloud security SIM for IoT | SORACOM 日本カバレッジ IoT SIM | mineo M2Mアクセス | ロケットモバイル 神プラン | ロケットモバイルZ |
---|---|---|---|---|---|
価格 | 217円/月(税込) | 300円/月~ | 350円/月~ | 298円/月~ | 150円/月~ |
初期費用 | 要問合せ | 820円~ | 3,400円 | 3,400円 | 3,400円 |
SIM管理機能 | あり | あり | あり | あり | あり |
契約期間 | 1ヶ月~ | 1ヶ月~ | 1日~ | 1ヶ月~ | 1ヶ月~ |
拡張性※ | VPN グローバルIP 閉域接続 AWS連携 ハウジング連携 フリービットクラウド連携 | SMS カスタムDNS CHAP認証 | 5G 固定IP 端末認証 パケットシェア パケットチャージ SMS eSIM | SMS 固定IP 5G eSIM | 固定IP データチャージ |
データ容量 | 20MB/月~ | 300MB/月~ | 500MB/月~ | 無制限 | 10MB~ |
対応キャリア | NTTドコモ | NTTドコモKDDI | NTTドコモKDDI SoftBank | NTTドコモKDDI SoftBank 楽天回線 | NTTドコモKDDI SoftBank |
※一部プランでは利用できない場合があります
大手通信キャリア系のIoT SIM
大手キャリア系のIoT SIMは、高い安定性が特徴です。以下に、IoTに特化したプランをピックアップしました。以下のリストから項目をクリックすると、サービス概要にジャンプします。
Arcstar Universal One モバイルグローバルM2M 100円SIM

NTTコミュニケーションズが提供するArcstar Universal One モバイルグローバルM2M 100円SIMは、低コストで小容量(MB単位/日)のデータ通信を提供し、グローバルM2M用途に特化しています。APIによるSIM管理やVPN対応の高いセキュリティ、ドコモ回線の安定性が特徴です。年単位の長期契約とグローバルローミングに対応し、企業向けサポートも充実しています。
KDDI IoT アクセス

KDDIのプロファイルとソラコムのIoTプラットフォームを融合した国内向けIoT通信サービスであるKDDI IoT アクセスは、低コストでデータ無制限の柔軟なプランを提供しています。特に農林水産業や製造業の効率化を支援しており、例えばスマート農業ではセンサーによる土壌管理、漁業では養殖モニタリング、製造業では工場機器の遠隔監視に活用されています。
1NCE IoTフラットレート

1NCE IoTフラットレートは、SoftBankが代理店として提供するIoT SIMです。SoftBank回線を活用し、SMSやグローバルローミングで幅広い地域に対応しています。VPN対応でセキュリティが高く、遠隔監視やスマートメーター、物流トラッキングなど、長期間の安定運用が求められるIoT用途に最適です。
大手通信キャリア系のIoT SIMサービス比較表
サービス | Arcstar Universal Oneモバイル グローバルM2M 100円SIM | KDDI IoT アクセス | 1NCE IoT フラットレート |
---|---|---|---|
価格 | 定額 100円/月 | 定額 150円/月 + 従量課金 1円/MB | 定額 2,000円/10年 |
初期費用 | 3,500円 | 900円 | 200円 |
SIM管理機能 | あり | あり | あり |
契約期間 | 1カ月~ | 1カ月~ | 10年 |
拡張性 | VPN、閉域接続 | 閉域接続、ソラコムのIoTプラットフォーム | SMS、グローバル対応 |
データ容量 | 1MB/月 | 無制限 | 500MB/10年 |
対応キャリア | NTTドコモ | KDDI | SoftBank |
IoT SIMの活用事例
IoT SIMは、以下のような場面で活用されています。
スマート農業
スマート農業では、IoT SIMはセンサーやドローンに搭載され、農場の遠隔監視やデータ収集に使われます。例えば、土壌水分や気象データ、作物の健康状態が必要な場合、SIM経由でリアルタイムデータを最終的に管理用のアプリケーションに送信します。これにより、灌漑の最適化、害虫対策、収穫タイミングの改善に繋げ、生産性向上や省力化を実現します。
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監視カメラ
監視カメラ用途でのIoT SIMは、映像やセンサーデータの遠隔監視に使用されます。例えば、施設のセキュリティ監視、人の動きの検知、環境変化の記録が必要な場合、リアルタイムで映像やデータをモニターなどの管理画面に送信することにより、異常の早期発見、セキュリティ強化、遠隔での状況把握に繋げ、効率的な管理と迅速な対応を実現します。
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車両管理
車両管理では、IoT SIMを車両と連携したデバイスに組み込み、位置情報や運行データを遠隔監視します。例えば、バッテリー電圧、エンジンの起動・停止、走行位置をリアルタイムで取得し、IoT SIMで送信します。これにより、バッテリー管理で車両の故障を予防し、異常なエンジン起動で盗難リスクが軽減されます。他にも走行データを活用してルート最適化や運転効率の向上を実現することで、車両運用の安全性と効率性を高めることができます。
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移動式クレーン車、トラックのバッテリー電圧・エンジンの起動・停止状態の監視に利用:一之瀬運送有限会社 様
太陽光発電
太陽光発電では、IoT SIMはスマートロガーなどの発電設備に搭載され、発電量、システム状態、雑草の成長具合の遠隔監視に使用されます。例えば、パネルの発電効率や故障検知、気象条件、雑草の繁茂状況が必要な場合はIoT SIMを通じてリアルタイムでデータを遠隔地の管理者に送信することにより、発電効率の最適化、故障の早期発見、除草業務の効率化に繋げ、運用コスト削減とメンテナンスの省力化を実現します。
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まとめ
IoT SIMは、低データ量・長期利用に最適化された通信手段です。スマートフォンSIMと異なり、コスト効率とグローバル対応が強みです。用途や料金プランを考慮した選び方が重要で、活用事例も多岐にわたります。貴社のニーズに合ったサービスを選び、IoTプロジェクトを成功させましょう。